Ⅱ第5回LIFEWORK「美しき日本の自然を守る!」
世界に誇る美しき日本の自然、春夏秋冬山里の風景、野生動物、生物と人々との秩序があった関係は、何故、何時、破綻してしまったのでしょうか。青春時代から登山の喜びを知り、山頂を目指す道すがら、四季が織りなす折々の美しき風景を愛で、草花や生物の生態を深く学んできた岩堀弘明会長。この美しき自然が破壊されていく現実を目の当たりにし、言いようのない憤りと共に不可解な疑問を覚えたのです。
埼玉県生態系保護協会の会員となり、会の活動で知った丸山日本オオカミ協会会長の「頂点捕食者を欠く日本の山林問題」と題する講演。この疑問への明快な解答を得た瞬間でした。


講演内容は科学的根拠とデータに基づく論理的分析、全ての現象に納得のいく答え、自然再生の唯一無二の解決策でした。賛同した会長は早速オオカミ導入の啓蒙活動に参加し、全国のフォーラムに駆け付け、各地の参加者に語っていきました。
最善策ではあり、導入の理解は深まってきたものの、国家の政策とするため、実現するにはハードルは高く、簡単には進みません。高齢となった今、会の運営では、その重責を後継の方々にバトンタッチをしました。
米寿を迎えるアクティブな岩堀会長、個人として「美しき日本の自然を守る」には何をもって貢献できるか、深く考え、結論したらすぐに行動です。
埼玉県生態系保護協会の堂本局長を通して、両神小森の白井差口一帯を代々保有している山中豊彦氏を知ることになります。この一帯も鹿被害があり、下草は全くなく、餌となる木の実がない事態に、熊も山里に頻繁に現れるという実態がありました。
2021年、「山林を再生する」と意を決した岩堀会長、山中氏所有の山林の一部1,000坪を購入。山頂までの山道、鹿除けの棚(1,000m)を造作。鹿を排除した山林の生態系を、生態系保護協会の方々に毎年春と秋にその回復調査をしてもらう実験を開始したのです。
生態系保護協会の報告によれば、本来の山林の姿を再生するのにそれほど時間はかからない。3年でカタクリが姿を見せ、5年もすれば藪や森の下草も姿が見られ、そうなるとブナやミズナラの実もなっていく。その実が熊の餌になれば、熊が山里に出没することもなくなる。森の姿が変化していけば秩父の地下を流れる理想的な天然ミネラル水を生み出せることにも繋がる。


山林再生の狙いは、鹿を排斥したことで、かつての「美しき日本の山里の姿」を取り戻した事実を証明することになる。鹿除け柵を全国の山林に造作するのは費用もかかり、鹿自体が減少することはない。そこで人の手によって絶滅してしまった「山の頂点捕食者オオカミ」を導入することで、自然界の調和が保たれ増えすぎた鹿、餌場がなくなった熊などの被害が軽減していくことは明らかだ。
人と野生動物との共存は、山里に生息するすべての動植物の生態系にとって一番良い効果をもたらすことになる。米寿を迎える岩堀弘明会長のライフワーク「美しき日本の自然を守る!」は、「美しき日本の自然(山里)の姿」を取り戻すことにある。
※岩堀弘明著随想文「両神小森山林保護の経緯」両神小森山林保護(2025.4随想文)
